いのうえ小児科
アレルギー科クリニック
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アレルギー性鼻炎は、気管支喘息より寛解しにくい疾患で、三大症状として、鼻汁、くしゃみ、鼻閉を認めます。俗に言うアレルギー性鼻炎とは、通年性鼻炎のことであり、気管支喘息と同様、春秋に症状が増強する傾向があります。一方、花粉症は、季節性アレルギー性鼻炎とも言われ、ある一定期間に鼻症状だけでなく、眼症状も伴う場合が多いです。花粉症は、以前は思春期以降の疾患と考えられていましたが、現在は幼児期にも認められる疾患で、徐々に発症は低年齢化してきています。
   
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アレルギー性鼻炎の原因は、主としてダニ、ハウスダストであり、その他に真菌類等も抗原としてあげられます。花粉症を引き起こす抗原は多種存在しますが、中でも頻度が多いのはスギ花粉です。また飛散量の変動が最も大きいのもスギ花粉で、前年の夏の気候の影響を受け、夏の猛暑の期間が長ければ長いほど、花粉が十分に育ち、大量飛散につながる傾向があります。
 
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アレルギー性鼻炎・花粉症の診断は、症状からもある程度推測可能ですが、客観的指標として、アレルギー検査が必要と考えられます。代表的なアレルギー検査として、血液検査では、抗原特異的IGE抗体定量(FEIA法)であり、皮膚検査では、プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テストであります。他に参考所見として、血中あるいは鼻汁中好酸球検査等もあります。また、アレルギー性鼻炎の合併症として、副鼻腔炎も時々認められ、診断にはX線検査が有用です。
 
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アレルギー性鼻炎の治療には、@抗原回避 A薬物療法 B抗原特異的免疫療法(皮下免疫、舌下免疫等) C手術療法等があります。

@他のアレルギー疾患同様、治療の原則は抗原回避ですが、抗原が主に吸入抗原だけに、回避するのはなかなか困難です。しかし、アレルギー性鼻炎に対して、ダニ対策(フトン干し等)、ハウスダスト対策(掃除、換気等)を行い、抗原量を減らす努力は必要であり、花粉症に対しても、花粉飛散時期に、マスク、ゴーグル着用、最低必要限の外出等の対策はするべきであります。

A薬物療法の中心となる薬剤は、抗ヒスタミン剤及びロイコトリエン受容体拮抗剤の内服薬と点鼻薬(主にステロイド剤)です。鼻汁・くしゃみに対しては抗ヒスタミン剤、鼻閉に対してはロイコトリエン受容体拮抗剤が主に使われます。その他、鼻閉に対して、成人の場合、トロンボキサンA2受容体拮抗剤あるいはTh2サイトカイン阻害剤も使用する事があります。一般に、アレルギー性鼻炎に対しては、1種類だけではなく、2〜3種類の薬剤を併用処方する場合が多く、気管支喘息と異なり、症状の増強に合わせて調整しながら内服する方法で、経過観察していきます。勿論、長期に渡って内服継続する場合もあります。また、上記の薬剤を内服継続していても、日常生活に支障をきたす時には、抗ヒスタミン剤・ステロイド剤含有の合剤が短期間必要となるケースもあります。一方、花粉症の場合には、花粉飛散時期に合わして、一定期間上記の薬剤を内服継続します。その場合にも、2〜3種類の内服薬を併用した方が良いと思われます。また、花粉飛散時期の症状を軽減する方法として、花粉飛散時期の1〜2週間前より、薬剤を内服する初期療法を行う事もあります。

Bアレルギー性鼻炎・花粉症の唯一の根治療法は、抗原特異的免疫療法です。免疫療法の中で、皮下免疫療法は、様々な濃度の抗原エキスを用いて、皮内テストを施行し、皮内反応が引き起こされる1/10濃度より、皮下注射を開始、週1〜2回のペースで徐々に濃度・量を増やし、アレルギー反応を抑制する抗体(主にIgEを介する反応をブロック)を生体内で生成させる方法です。いったんアレルギー反応が抑制出来ると、長期間(年単位)、コントロール良好な状態を維持可能というメリットがあります。逆に欠点は、治療期間が最低2〜3年必要であること、アナフィラキシーを引き起こす危険性があること、皮下注射による痛みを伴うことです。他方、舌下免疫療法は、1日1回舌下錠を投与する方法で、痛みを伴わず、アナフィラキシーの頻度は、皮下免疫療法より、はるかに少ないと言われております。現在では、スギ抗原、ダニ抗原による舌下免疫療法が認可され、以前は12才以上及び成人にのみ適応だったのが、5才以上に適応年齢が拡大されています。今後、舌下免疫療法が主流になると考えられます。

C手術療法は、主に耳鼻科にて施行されます。鼻粘膜の縮小を目的とした手術として、電気凝固法、レーザー療法等があり、鼻腔整復術を目的とした手術には、鼻中隔矯正術、下鼻甲介粘膜切除術等があります。いずれも、重症のアレルギー性鼻炎で、鼻中隔彎曲症など明らかな形態異常あるいは、薬物療法で十分な効果が得られない場合が、適応となります。
 
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one airway、one disease という説があり、アレルギー性鼻炎を積極的に治療すると、気管支喘息の症状が軽減されたり、気管支喘息発症の予防にもつながると言われています。実際臨床の場でも、上気道感染が気管支喘息発症・悪化の原因になることが、しばしば認められます。また、統計上、気管支喘息患者の約70%がアレルギー性鼻炎を合併しており、逆にアレルギー性鼻炎患者の約30〜40%が気管支喘息を合併しています。さらに、アレルギー性鼻炎が、気管支喘息の危険因子及び増悪因子であり、気道過敏性亢進の危険因子になるという報告もあります。いずれにせよ、上気道及び下気道のアレルギー性炎症は連続していると、捉えられつつあります。
 
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アレルギー性鼻炎の合併症として、副鼻腔炎(蓄膿症)、中耳炎(特に浸出性、幼児期に多い)があげられます。アレルギー性鼻炎患者で、時々合併症を有する場合には、抗アレルギー剤(主に抗ヒスタミン剤及びロイコトリエン受容体拮抗剤等)による積極的な治療が長期間必要になります。
 
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先述した様に、アレルギー性鼻炎・花粉症を完治させる唯一の治療法は、免疫療法で、特に舌下免疫療法をお勧めします。小児・成人を問わず、当クリニックにて、舌下免疫療法を施行しております。アレルギー性鼻炎・花粉症でお悩みの方は、一度外来受診のうえ御相談下さい。
 
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